「けものフレンズ」から考える”オタク向けに切り替える勇気”
「けものフレンズ」というアニメをご存知でしょうか。
この世界のどこかにつくられた超巨大総合動物園「ジャパリパーク」。
そこでは神秘の物質「サンドスター」の力で、動物たちが次々とヒトの姿をした「アニマルガール」へと変身――!
訪れた人々と賑やかに楽しむようになりました。しかし、時は流れ……。
ある日、パークに困った様子の迷子の姿が。
帰路を目指すための旅路が始まるかと思いきや、アニマルガールたちも加わって、大冒険になっちゃった!?
ニコニコ動画でも今でも総合ランキングに入ってくるほどの人気ぶりで、大反響を呼んでいるアニメです。
私は1話を見て「うーん、ちょっと違うかな」と思って切ったのですが、思った以上に周りでは「面白い」との声が上がっていたので、気になって結局ニコニコで1500円のジャパリパス(ニコニコ動画の2-12話の有料動画「けものフレンズ」が1ヶ月間視聴可能)を買って3日で全部観てしまいました。
確かにこのアニメ、観れば観るほどよくできてますし、不覚にも最終話ではうるっときました。
さて、そんな大反響の「けものフレンズ」が動物園とコラボしはじめているとのことなので、今回は「けものフレンズ」の感想から始まって、オタクをターゲットにするメリットについて触れてみたいと思います。
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- この記事は 旧ブログで2017年4月29日に書いた記事をリライトした記事になります
「けものフレンズ」のあらすじ
- ここのセクションはやんわりネタバレを含みます
このアニメはヒトであるかばんちゃんがサーバルのフレンズであるサーバルちゃんと一緒に、かばんちゃんが何のフレンズなのかを探すための旅に出るところからはじまります。
最初はフレンズという概念がなんなのか、フレンズを食べてしまうセルリアンという生き物は何なのか、ここはどこなのか、よく分からないまま進むので、
中途半端な3Dで、唐突に始まるバトルに、一話を見てクエスチョンマークだった視聴者も多いのではないかと思います。
そう、一話だけで見てしまうと、本当に何でここまで人気が出たのかは全く謎なのです。
ただ、話が進むにつれ、かばんちゃんはヒト特有の知恵と賢さから問題を解決していき、フレンズしか住んでいないこのパークの真相にたどり着きます。
そして、一話で無駄だと思ったやり取りやシーンを最終話で綺麗に回収していくので、全体でみると本当に無駄のないアニメなんです。
内容は一見幼稚に見えますが、取り扱っているのは完全に哲学に近い何かであり、
ヒトと動物との違いや関係性を感じたり、荒廃したパークに点在する人工物を、知恵を使って利用していくヒトのすごさを感じることができる、そんなアニメになっています。
なぜここまで「けものフレンズ」は人気が出たのか
なぜここまで「けものフレンズ」は人気になったのでしょうか。
私は、このアニメの人気は、
- 王道
- ミステリアス
- 厳選された視聴者
にあると思っています。
王道
このアニメは、萌え系やボーイズラブなどのジャンルがはびこっている今のアニメ時代で、綺麗なほど正統派の王道で勝負しています。
主人公を可愛くするだとか、展開をエロくするだとか、そういう食いつきがいい要素を完全に取っぱらい、キャラクターとシナリオで勝負しているので素直に評価できます。
ミステリアス
伏線をある程度のタイミングで回収しながらも、ワンシーンに出てくる違和感のある描写に触れないケースも多く、Youtubeでは毎話放送されるたびに考察動画がアップロードされていきました。
そういう活動が、製作者も予期していない深さを「けものフレンズ」に与えました。
厳選された視聴者
たとえば、一話目からなかなか面白そうだと思ったアニメの最終話がイマイチだったら視聴者からは「最後までみたのにイマイチだった」という意見がでてきます。
では一話目で面白くないと思った人はどうするかというと、最初の私のように一話目で見るのをやめてしまい、この層からは意見はでないのです。
「けものフレンズ」製作者側はまさかここまでは意図していなかったとは思いますが、面白いと思った人が見続け、その人達を満足させたので悪い評価が少ないのだと思います。
人気が出た、といいつつもイマイチ「けものフレンズ」の人気にピンとこないのもその理由で、ネット界隈がめちゃめちゃ盛り上がって、ネットを越えて影響を及ぼしてきただけで、知らない人は知らないのです。
さて、そんな「けものフレンズ」はスマホゲーム化だとか、舞台化決定だとか、幅広い分野に影響がでており、とくに大きく影響を受けているのが動物園です。
動物園もフレンズ化?
市営動物園も
吉崎観音氏がコンセプトデザインを手掛ける動物を原作としたプロジェクト「けものフレンズ」と、札幌市円山動物園・
千葉市動物公園・京都市動物園・福岡市動物園の園内ショップとのコラボレーション企画です。
この企画では、動物園や動物をより知ってもらうことを目的とし、売上の一部は動物園へ寄付されます。
by けものフレンズ Meeting Zoo Friends!
日本にある動物園がどんどん「けものフレンズ」化しています。
もともと多摩動物公園は、アニメの人気で入場者数が増えてきたことは知っていたものの、はじめは特に「けものフレンズ」感は出していなかったようですが、最近ショップ等で見られるようになった様子です。
これはつまり何をしているかというと、ターゲットをオタクに切り替えているのです。
オタク向けに切り替える勇気
オタク市場という言葉があります。
「オタク市場」調査結果(2015年度)が矢野経済研究所から発表され、一人あたりの年間平均消費金額の分野別では、アイドル分野が7万9783円で1位 となった。前回調査ではアイドル分野は7万4225円だったので、今年はさらに伸びている。2位がメイド・コスプレ関連サービスの3万7289円、3位が アニメの2万9843円となった。アイドル分野は2位と3位の合わせた金額よりも多くダントツだった。
by オタク市場調査、一番お金をつかっているのは何オタク? | ZUU online
その名の通りオタクの心を揺さぶるアイドル・アニメ・コスプレなどをまとめた市場ですが、一人当たりの消費量も多く、今の日本にとって大きな存在になっています。
その中でもアニメは、ブルーレイディスクやグッズにとどまらず、アニメの元になった実際の土地や食べ物がブームになるような大きな影響力を持っています。
今回の「けものフレンズ」でいうと、その聖地巡礼の代わりになったのが各地の動物園でした。
「けものフレンズ」にでてくる動物がいるだけでその動物園の来場者数は増加するので、そのブームに便乗して動物園側がいろいろアクションを起こしているのだと考えられます。
これは、行ってしまえばミーハーな感じで、「ほれ、おまえらの好きなサーバルちゃんだぞ」と言われているような、なんだか見透かされているような気もしてしまうので、いいイメージがわかない人もいるかもしれませんが、私は動物園のこの対応は正しいと思っています。
動物園側としても、なんでもない動物園のグッズに「けものフレンズ」のキャラクターに喋らせたPOP広告をつけるだけで売り上げに貢献するのならこれほどコストパフォーマンスの良いアクションはありません。
流行に便乗して一緒に盛り上げる。
素晴らしいことだと思います。
いいんです、ブームなんて結局はお祭りなんだから、一緒に盛り上がれば。
まとめ
数年ほど前に比べると、ずいぶんオタクに対して社会が寛容的になった、というか耐性がついた、と言った方が正しいでしょうか。そんな時代になったと思います。
今こそ、オタクの興味関心事を常にキャッチアップし、流行に便乗してコラボして、日本のいろいろなところを盛り上げて欲しいなと私は思っています。
廃れた業界をアニメが賑やかにさせる、そんな時代になることを祈って、良い大人ではありますが、引き続き私はアニメを好きでいたいと思いました。